チャートを活用しよう!(読み方・活用方法)

 道路には「地図」があるように、空港や航空路にも「地図」があります。この地図のことを「チャート」と言います。空港のチャートは「エアポートチャート」、航空路のチャートは「エンルートチャート」と呼びます。

 

 チャートが読めるようになると、航空管制を聞く時にもいろいろ役立つ情報が得られます。パッと見ると難しそうなチャートですが、慣れれば意外と簡単に読めますので、チャレンジしてみましょう!

 

1.ウェイポイント

 最初に「ウェイポイント」です。ウェイポインとは、航空路上に設定された架空のポイントの事です。道路地図に置き換えれば、「地名」の事と言えます。

 下の図は、関東周辺の実際のエンルートチャートの一部を切り取ったものです。赤い四角で囲んだところが「ウェイポイント」になります。

 ウェイポイントを示す「マーク」と、それぞれのウェイポイント位に付けらえた「名称」が記載されています。名称は「NINOX」「BIVET」「KIDAX」などのように、5文字のアルファベットになっています。

 冒頭で「架空のポイント」と言っていますが、これは地上にウェイポイントを示すような施設などがあるわけではなく、その経度・緯度の地点に名前を付けただけ・・・ということです。当然ですが、上空に何かが浮かんでいるわけでもありません。

 旅客機の場合、搭載されたコンピュータのデータベースに、これらのウェイポイントの情報が保存されており、それをコックピットの画面上に表示することが出来ます。これとGPSによる位置情報を組み合わせることにより、自機がいまどこにいるかが判るようになっています。

2.航空路(RNAVルート)

 複数のウェイポイントを繋ぎ合わせて、道路のようにしたものが「航空路(エンルート)」です。下の図で、赤い四角で囲んだ部分が「航空路」になります。

 この例では、「NINOX」-「BIVET」-「ALPUS」-「CHAUS」-「KIDAX」が直線で繋がれており、その途中に「Y28」という名称と左向きの矢印が書かれています。
 これは、この航空路(エンルート)の名称が「Y28」で、矢印はこのルートを飛行する向きを表します。つまり、Y28ルートは西行きの航空機が使用するルートである、ということが判ります。

 

 現在、ほとんどの旅客機では搭載されたコンピュータにより、自機の飛行位置を自動的に計算して飛行することが出来るため、このような「架空の」ポイントを用いて飛行ルートを設定することが可能です。このような運航方式を「RNAV(aRea NAVegation:広域航法))運航方式」と言います。 

3.VOR
 航空路を形成するもう一つの要素として「VOR」というものがあります。「VOR」とは、「VHF Omnidirectional Radio Range」の略で、日本語では「超短波全方向式無線標識施設」と言います。

 これは実際に地上に無線施設が設置されており、それぞれに与えられた超短波帯の周波数で、全方位に向けて決められた方法で電波を送信しています。

 VORには「DME(Distance Measuring Equipment)」という「距離測定装置」が併設されていることが多く、これにより航空機はVORからの電波を受信することで、VORに対する方位と距離を知ることができ、自機の位置を確認することが可能となります。

 「VOR」は、

 

 下の図で、赤い四角で囲んだ部分が「VOR」を表します。

 「VOR」記号と矢印でつながっている四角い枠内には、そのVORに関する情報が記載されています。

例えば「YOKOTA」VORの場合、以下の情報が読み取れます。

 

YOKOTA ・・・ 名称

117.2   ・・・ 送信周波数 117.200MHz

YOK   ・・・ 無線識別符号

85X    ・・・ 軍用無無線チャンネル

「85X」の横の点線 ・・・ 識別符号「YOK」をモールス符号で表したもの

 

ちなみに、VORの近くでそのVORの割当周波数をAMモードで受信してみると、モールス信号でVORの無線識別符号が一定周期で聞こえてきます。興味がある方は聞いてみてくださいね。

(聞き取るためには、モールス富豪の勉強が必要になりますけどね・・・(笑))

 

4.VORルート

 航空路には、複数のVORを繋ぎ合わせて形成するものもあります。下の図では、赤枠で囲んだ茶色の線のルートがそれにあたります。

 

 このルートにも名称が付けられており、上の例では「V17」と茶色の文字で示されています。

 

 VORルートは、RNAVルートと異なり実際に地上にある施設のポイントを繋ぎ合わせていますので、RNAVルートに比べると曲がりくねったルートになりやすいのが判ります。

 このルートを使用するのは、機上コンピュータによる自動航法の機能を持っていない、小型の航空機が主となります。 

5.チャートの活用

 では、エアバンドを聞いているときに、どのようにチャートが活用できるか・・・ということになります。

 例えば今、東京羽田空港を出発し、ウェイポイント「NINOX(ニノ)」へ向かっている航空機「JAL777便」の航空管制を自宅で聞いているとします。

 

 ここで管制より「ジャパンエア777、ダイレクト「KIDAX(キダ)」と指示が出ました。ここですかさずチャートを見てみましょう。

 指示が出る前、JAL777便は赤い点線のルートで「NINOX」へ向かっていました。エンルートチャートを見ると、NINOXから先は「BIVET→KIDAX→IPLES」の順で飛行予定でしたが、「KIDAX」への直行指示が出ましたので、この先は紫の実線のように飛行することが判ります。

 このように、自宅にいながらでも航空機の飛行位置やルートを簡単に把握することが出来ますので、チャートを活用することで、単にエアバンドを聞区だけでなく、楽しみ方が広がると思います。

 

 また、機内でエアバンドを聞いている状況であれば、今自分が搭乗している航空機が、これからどのルートを飛行するのかが把握できます。

 

 チャートの活用方法はこれだけではありません。いろいろな用途がありますので、まずチャートの読み方を覚えて見てはいかがでしょうか?