航空無線(エアバンド)の交信例(出発~離陸)
このページでは、航空管制では実際にどのような交信が行われているのか、日本語訳を交えてシミュレートしてみたいと思います。
これを参考にして頂ければ、本物の航空管制を受信して聞いた時にも、早く内容を聞き取れるようになるのではないかと考えます。
※ご注意
ここで公開している航空無線の交信は完全にフィクションです。実在の航空会社名などを使用しておりますが、実際に行われた交信とは全く関係はありません。
また、実際に行われた通信の内容を、インターネット等に公開することは、電波法などの法律に違反する行為となります。絶対に行わないでください。
【場面設定】
東京羽田空港発、大分空港行のANA700便が、羽田空港のスポット60番を出発し、大分空港のスポット10番へ到着するまでの、航空管制との交信を追ってみます。
※赤文字が航空機側、青文字が管制官側の送信内容を示します。
- 【SCENE-1】羽田空港出発承認(Tokyo Delivery)
-
大分行 ANA700便が出発準備を整えて、羽田空港の管制に呼びかけてきました。
交 信 内 容 解説・備考 Tokyo Delivery,ALL NIPPON 700.
To Oita Airport,request clearance,
information "A".
(東京デリバリー、こちらはANA700便です。
大分空港行き、出発の承認をお願いします。
ATISは"A"を確認済み。)一番最初の交信は「デリバリー」から始まります。
デリバリーでは、事前に提出済みのフライトプランの
承認をもらいます。
「Information "A"」とは、空港の気象情報(ATIS)の
情報番号"A"を示し、最新の情報を持っている事を
これで確認し合います。ALL NIPPON 700,Tokyo Delivery.Cleard to
Oita Airport,via NINOX-RNAV departure
flight planed route,maintain flight level 380,squawk 1715.
(ANA700便、こちらは東京デリバリーです。
"NINOX-RNAV"出発方式で大分までのフライト
プランを承認します。
飛行高度はFL380、レーダー識別番号は1715です。)出発方式"NINOX-RNAV"とは、各空港ごとに決め
られている出発ルートの事です。大規模空港では、
行先や使用滑走路などにより様々な方式が定められ
ています。
高度は「フィート」の単位で表され、14000フィート
以上では「FL」を付けた上3ケタの数値で表現され
ます。
「FL380」は「フライトレベル380」と読み、高度
38000フィートの事を表します。
「レーダー識別番号」とは、管制官がレーダーで航空
機を識別するためのコードです。
航空機側ではこのコードを無線機(トランスポンダー
)にセットします。ALL NIPPON 700,roger.Cleard to Oita
airport via NINOX-RNAV departure,
Flight level 380,Squawk 1715.
(ANA700便です、了解しました。出発方式は"NINOX-RNAV"、高度FL380で大分空港へ
向かいます。レーダー識別番号は1715。)管制からの指示を航空機側から復唱します。
これにより、管制からの指示が正しく伝わって
いるか確認できます。
航空管制ではこのやり方(リードバック)が必ず
行われています。ALL NIPPON 700,Delivery ,Readback is correct.
Contact GND 121.800.
(ANA700、デリバリーです。
復唱に間違いありません。121.8MHzでグランドと
交信してください。)フライトプランの承認、出発ルートの指示など、
デリバリーとの交信が終わったら、次はグランド
管制との交信です。
管制官から、グランドと交信する指示が出ます。ALL NIPPON 700,Contact GND,121.800.
(ANA700便、121.8MHzでグランドと交信します。) - 【SCENE-2】プッシュバック~地上滑走(Tokyo Ground)
-
ANA700便はいよいよゲートを離れます。グランド管制に「プッシュバック」の許可をリクエストします。
交 信 内 容 解説・備考 Tokyo Ground,ALL NIPPON 700.
Gate 60,request Pushback.
(東京グランド、こちらはANA700便です。
ゲート60よりプッシュバックを許可願います。)日本では、航空機は自力でのバックを許されて
いませんので、専用車両で押してもらいバック
します。これを「プッシュバック」と言います。ALL NIPPON 700,Tokyo Ground.Pushback
Approved.Runway 05.Face to South.
(ANA700便、こちらは東京グランドです。
プッシュバックを許可します。離陸滑走路は05、
機首を南に向けてください。)「Face to South」とは機首を南へ向けるように
プッシュバックする指示です
大規模空港での特有の指示です。ALL NIPPON 700,roger,Pushback Runway
05,Face to South.
(ANA700便です、了解しました。プッシュバック
を開始します。離陸滑走路は05、機首は南向き。)ANA700便はプッシュバックが終わり、
地上滑走の準備が出来ましたTokyo Ground,ALL NIPPON 700,
Request Taxi.
(東京グランド、ANA700便です。
地上滑走を許可願います)。ALL NIPPON 700,Runway 05,Taxi via
"E6","E","S".
(ANA700、滑走路05へ、誘導路"E6"、"E"、
"S"誘導路を経由して地上滑走してください。)地上滑走の許可では、離陸滑走路まで経由する誘導路
を指示されます。
"E6"、"E"、"S"は誘導路の名称です。各空港毎に定め
られています。Roger,Runway 05,Taxi via "E6","E","S",
ALL NIPPON 700.
("E6"、"E"、"S"誘導路経由で滑走路5へ地上
滑走します。) - 【SCENE-3】離陸~出発ルート(Tokyo Tower~Tokyo Departure)
-
大分行 ANA700便は滑走路05へ向け地上滑走中です。
いよいよ離陸滑走路に近づいてきました。
交 信 内 容 解説・備考 ALL NIPPON 700,Contact Tower 118.72.
(ANA700便、118.725MHzで東京タワーと交信
してください。)滑走路が近づいてくると、管制は離陸・着陸を
管制するタワーに引き継がれます。Contact Tokyo Tower,118.72,ALL NIPPON
700.
(118.725MHzで東京タワーと交信します。)ANA700便は東京タワーの周波数に切替え、
東京タワーに呼びかけますTokyo Tower,ALL NIPPON 700 On your
Frequency.
(東京タワー、ANA700便です。こちらの周波数に
変えました。)ALL NIPPON 700,Tokyo Tower.
Your No.2 Hold Short of Runway 05.
(ANA700便、東京タワーです。あなたの離陸は
2番目です。滑走路05の手前で待機してください。)ANA700便の前に離陸期がいたようです。
「Holh short of Runway」というフレーズは
滑走路手前で待機を指示するものです。ALL NIPPON 700,Line up and wait,
Runway 05.
(ANA700便、滑走路05に入り、離陸位置で
待機して下さい。)ANA700便の前にいた航空機が離陸しました。
滑走路に入り、待機する指示が出ました。Runway 05,line up andwait,ALL NIPPON
700
滑走路05に入り、離陸位置で待機します。)ALL NIPPON 700,Wind 050 at 3knots,
Runway 05 Cleared for take off.
(ANA700、風向50°、風速3ノット、
滑走路05空の離陸を許可します。)離陸許可に際し、現在の風向と風速が伝えられ
ました。
風向は北を360°とする数値で、風速はノットを
単位とする数値で表現されています。Runway 05 Cleared for take off.
All nippon 700.
(滑走路05より離陸します。)ALL NIPPON 700,Contact Departure.
(ANA700便、ディパーチャーと交信 して
ください。)離陸したANA700便は、出発管制へと引継がれ
ます。Contact Departure,ALL NIPPON 700.
Good day!
(ディパーチャーと交信します。良い一日を!)「Good day」は航空管制でよく聞かれる挨拶の
フレーズです。この先ANA700便は、出発管制でレーダー誘導を受けながら、航空路へと上昇していきます。
【お勧めの航空管制関連書籍】
このページでは、私の考えたフィクションに基づき、航空管制の交信例を掲載して
います。
もっと詳しく航空管制を学習したい、もっと詳しい文例が欲しい、という方には次の
書籍をお勧めいたします。
航空管制の初心者向けに書かれており、基礎知識から学習
するのに最適な本だと考えます。
第3章の「紙上体験」では、このページのような交信例が
掲載されています。