航空管制の仕組みを知ろう

 航空機が出発地から目的地へ飛行する時、パイロットは航空管制官の指示を受けながら飛行しています。航空管制は日本国内をくまなくカバーして、全国を飛行する航空機を管制しますが、さすがに一ヶ所で全国の航空機を管制する事は出来ません


 そこで、航空機の飛行フェーズや飛行エリアによりいくつものセクションに分かれて管制を行っています。エアバンドを受信するには、最初にこれを理解しておく必要があります。
 そこで、このページでは「航空管制の仕組み」について詳しく解説します。

1.航空機のフライトと主なフェーズ

 下の図は、航空機が出発空港を離陸してから、目的地の空港に着陸するまでの主なフェーズを示したものです。

大きく分けて、5つのフェーズで考えることができます。

(1)出発・離陸
  出発地の空港(図の右側)を出発した航空機は、空港ごとに決められた出発方式に従って離陸していきます。
(2)上昇
 決められた出発ルートに沿って、航空路へ向けて上昇していきます。
(3)巡行
 巡航高度に達した航空機は、目的地の空港近くまで航空路を飛行します。
(4)降下・進入
 目的地の空港が近くなったら、着陸に向けて降下し、決められた進入ルートに沿って着陸態勢に入ります。
(5)着陸・到着
 決められた着陸方式に従って目的地の空港に着陸し、指示されたゲートへ地上滑走します。

 航空管制では、これらのフェーズごとに担当する管制セクションが分かれており、航空機はフェーズごとに次々とセクションを引継がれながら、目的地へと向かいます。次の項で詳しい区分や担当役割を解説します。

 

2.ターミナル管制と航空路管制

 航空管制は大きく「ターミナル管制」と「 航空路管制」に分けられます。
  「ターミナル管制」空港内の地上から空港の周辺地域にいる航空機を管制します。
  「航空路管制」  上空に定められた航空路を飛行する航空機を管制します。 

3.管制セクションと役割

ターミナル管制」は、空港やその周辺の航空機を管制しますが、以下のようにそのフェーズごとにセクションが分けられています。

セクション 役     割 コールサイン
管制承認
(クリアランス・
デリバリー)
 航空機が飛行するルートや高度などを決めた「フライトプラン(飛行計画)」に対し、承認を出すセクション。
 出発準備を整えた航空機が最初に管制官と交信するのがこのセクションです。
 
※羽田・成田・関西・中部等の大規模空港に設置されているセクションで、中・小規模の空港にはありません。その場合はグランドやタワーがデリバリーを兼任します。

デリバリー
(CD)
地上管制
(グランド)
 航空機が駐機場から滑走路まで移動するときに、走行ルートの指示走行許可を出すセクション。
 到着機の場合は、滑走路を離れて誘導路に入るところから、駐機場に到着するまでの間をグランドが管制します。
 
※グランドが設置されていない空港もあります。その場合はタワーが担当します。

グランド
(GND)
飛行場管制
(タワー)
 離陸準備を整えた航空機への離陸許可や、最終進入中の到着機への着陸許可を出すセクション。
 テレビドラマなどで「クリヤード・フォー・テイクオフ!」というセリフを聞いたことがありませんか? タワーからの「離陸を許可する」という管制通信です。

タワー
(TWR)
出域管制
(ディパーチャ)
 離陸した航空機を、空港周辺に定められた出発経路に従って航空路まで誘導するセクション。

 ※小規模空港には設置されていないことが多いです。

ディパーチャ
(DEP)
入域管制
(アプローチ)
 航空路を離れて降下してきた航空機を、空港周辺に定められた到着経路に従って空港付近まで誘導するセクション。
 大きな空港では、各方面から多数到着してくる航空機を、安全に効率よく並べる交通整理も行います。

 ※小規模空港には設置されていないことが多いです。

アプローチ
(APP)
レーダー  羽田・成田などの大規模空港で設置されることがあります。空港周辺が混雑し、アプローチの業務量が増加したときに現れ、アプローチからタワーまでの間を細かく管制します。
 アプローチではなく常時レーダーで管制を行っている空港もあります。

レーダー
(RDR)

 出発機は「デリバリー」→「グランド」→「タワー」→「ディパーチャ」の順に、到着機は「 アプローチ」→「タワー」→「グランド」の順に管制を引き継がれていきます。

 

4.レディオ・リモート

 地方の中・小規模空港には、管制官が配置されていない空港があります。そのような空港では、管制官の代わりに「管制情報通信官」が配置されており、「レディオ」というコールサインが付いています。


 また、離島などにある空港では、管制を行う職員そのものが配置されていない事もあります。そのような空港では、その空港の近くにある大きな空港から遠隔で管制指示を行います。「リモート」というコールサインで運用されています。

 

5.ATIS

 「ATIS」とは「Automatic Terminal Information Service」の略で、「エイティス」や「アティス」と読みます。主に空港周辺の気象情報を放送のように送信しています。情報に含まれるのは以下のような内容です。


  風向・風速・気温・露点温度・雲の種類と量・視界・使用滑走路・情報の番号等

 

6.TCA

 「TCA」とは「Terminal Control Area」の略です。空港周辺を有視界飛行する小型機などに情報を提供する業務を行っています。

 

 「有視界飛行」とはパイロットが周囲を目視で確認して飛行する方式です。旅客機などの大型機は「計器飛行」という飛行方式を行っており、視界が効かない雲の中や夜間・悪天候時も飛行できますが、有視界飛行では視界が効かない場合は飛行できません。

 

 小型機には周囲を確認するレーダーなどが装備されていない場合が多く、TCAのアドバイスをもとに安全を確認しながら飛行しています。

 

 なお、計器飛行の事を「IFR(Insutruments Flight Rule)」、有視界飛行の事を「VFR(Visual Flight Rule)」と言い、VFR方式で飛行する飛行機を「VFR機」と表現したりします。