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屋外用アンテナをベランダに設置する方法

 ご自宅で、航空管制を快適に受信するためには、 屋外アンテナの設置が必須と言えます。
なぜなら、ハンディタイプのワイドバンドレシーバーに付属しているアンテナでは、屋内ではなかなかクリアに電波を受信するのは困難だからです。特に鉄筋コンクリート構造のマンションなどでは、電波が屋内まで届きにくいのでなおさらです。

 

 しかし、アンテナを屋外に設置するためには、 必要な部品や設置方法など、それなりの知識と経験が必要です。そこで、このページではマンションのベランダで比較的簡単に出来る、 屋外アンテナの設置方法必要な部材などを解説します。

1.設備構成

 鉄筋コンクリート構造のマンション屋内で、エアバンドを受信すると仮定して、設備構成例を解説します。

受信機は ハンディタイプで、机の上に設置します。

 

 部屋の外には ベランダがあり、コンクリート製の手すりがあるものと仮定します。また、部屋にはエアコンが設置されているか、またはエアコンのドレンホース用穴がある場合を想定しています。

 

 左のイラストがアンテナの設置例です。コンクリート製のベランダ手すりと、エアコンホース用の穴があれば、図のように比較的簡単に、難しい工事などほとんど不要でアンテナを屋外に設置できます。

 初心者の方でも、上手くいけば半日くらいで設置が出来ると思います。

 

 手すりがコンクリート製ではない場合でも、それに対応した設置ベースを使うことでアンテナが設置できます。

 また、エアコン室内機でドレンホース用の穴が隠れている場合は、窓に挟み込んでケーブルを引き込む製品もあります。

 あらかじめ、ご自分のお住いの状況をよく確認し、それに合った設置方法を十分に検討して準備してください。 

 

 では、具体的に必要な部品と設置手順を解説していきます。

2.用意する資材

 必要な機材は「アンテナ」、「同軸ケーブル」、「ベランダ手すり用ベース」です。

また、ご使用のワイドバンドレシーバーによっては、同軸ケーブルを接続するための「変換コネクタ―」が必要になる事があります。

(1)アンテナ

 この設置例では、「エアバンドを自宅で聞くなら屋外アンテナを設置」のページで紹介している第一電波工業の「D190」を使用するものとします。D190の詳細を確認したい方は、 こちらをクリックしてメーカーのページでご確認下さい。

 

 通常、アンテナとワイドバンドレシーバーを接続する「同軸ケーブル」が必要ですが、「D190」を使用する場合は10mの同軸ケーブルが付属していますので、別途購入する必要がありません。

 

もし、同軸ケーブルが付属していないアンテナを使用する場合は、別途必要な長さの同軸ケーブルをご用意ください。

(2)ベランダ手すり用ベース

 ベランダのコンクリート製の手すりを、挟み込むようにして設置します。

 

 今回の例で紹介するものは左の写真の製品です。適合するコンクリート手すりは、厚さが100~200mmの間です。平面でない場合などはコンクリート製であっても取付できない場合があります。

 

 この金具は元々BS・CSなどのパラボラアンテナをベランダに設置するための金具です。しっかり取付けられると、簡単にはズレたりすることがありませんので、多少の強風くらいなら安心して使用できます。

 

 なお、マンションによってはベランダがコンクリートではなく、格子状や角柱などの構造になっている場合もあると思います。

 そんな場合は、「その他の周辺機器」ページで紹介している「ベランダフェンス用ポール」などが使用できます。ベランダの状況を確認して、適合する製品をご購入下さい。

(3)同軸ケーブル

 同軸ケーブルが付属していないアンテナを購入する場合、アンテナに適合する「同軸ケーブル」が必要になります。

 

 「同軸ケーブル」はテレビにアンテナを接続する時にも使用されていますので、皆さんも一度は何気なく見たことがあると思います。

 エアバンド受信用のアンテナの場合は、テレビ用アンテナの同軸ケーブルとは少し異なるものを使います。

 具体的にな「インピーダンス」が異なります。テレビアンテナの場合は「75Ω(オーム)」のものが一般的ですが、エアバンド受信に使うアンテナは、ほどんどが「5」です。

 

 左の写真は同軸ケーブルの例です。通販サイトでは、長さが10m・15m・20mなどのものが多く販売されています。短いものでは5m前後のものもあります。皆さんの環境に合わせて必要な長さのケーブルをご購入下さい。

 

 また、注意が必要なのは「同軸コネクター」です。アンテナ側・ワイドバンドレシーバー側それぞれにコネクターが必要になります。

このコネクターにもいろいろな種類があり、もっとも一般的なものは「M型」です。例えば上記の「D190」でもM型コネクターを使用しています。レシーバー側では「BNC型」や、最近では「SMA型」も多く使われています。

 

 写真で紹介している同軸ケーブルには、M型コネクターが最初から付いています。このようなケーブルを選択すれば、コネクターを別に購入して取り付ける必要がありません。

 

 同軸コネクターの取り付けには手順があり、工具と経験が必要です。出来れば最初からアンテナに適合するコネクターが付いている同軸ケーブルを購入しましょう。各通販サイトで同軸ケーブルを購入できるリンクを、下記に準備していますので、ご利用ください。

5D-2V 10m
M型コネクター付き
3D-2V 10m
M型コネクター付き
無線アンテナ用の同軸ケーブルで
広く一般的に使われています。
外径約8mmで、やや硬めです。
  5D-2Vより細い外径約6mmで、
  通線しやすくなります。
3.設置手順

 では、部品の準備が揃ったら、設置していきましょう。設置するのはこのページで紹介しているアンテナ、ベランダ手すり用ベースです。

(1)手すり用ベースを取付ける

 ベランダのコンクリート製の手すりに、ベースを取付けます。

 

 写真は既に設置されているベースです(錆が浮いてますがご勘弁を・・・)。

ねじを緩めることで金具を広げることが出来ます。このねじは長いので、少々緩めたくらいでは外れません。

 ねじが緩むと左の写真のようにベースが伸縮します。ベランダ手すりと厚さに合わせてベースの長さを調整し、ベースを手すりに被せるようにセットします。

 

 ベースが手すりに当たる面にはゴムが付いていますので、しっかり密着するようにベースの幅を合わせ、先程緩めたねじを締めていきます。

 

 この時、締めすぎるとベースの金具が変形したり、ねじが噛みこんでしまうことがありますので、締めすぎないように注意してください。

手でグイっと押してもベースが動かないくらいまで締まれば、十分固定されています。

(2)アンテナを組み立ててベースに取り付ける

 次にアンテナを取扱説明書に従って組み立てます。

 

 今回ご紹介している「D190」には同軸ケーブルが付属しています。同軸ケーブルは組立中に先に接続しておく必要があります。後から接続することが出来ませんので、注意してください。

 

 同軸ケーブルを接続したら、コネクターの部分に必ず防水用のテープを巻いてください。普通のビニールテープでも良いですが、長期間屋外で風雨にさらされるアンテナですので、防水性の高い「自己融着テープ」を使用する事を推奨します。

 万一、コネクター部分に水が入ると同軸ケーブルが短絡したり、腐食したりする原因となり、正常な受信が出来なくなります。

 

 「自己融着テープ」は、名前の通り時間が経つとテープ同士がしっかりと溶けるように融着します。隙間がほとんど無くなり、高い防水性能を発揮し、コネクター部分を風雨から守ってくれます。ホームセンターなどで購入できると思います。

 

 アンテナを組み立てたら、(1)で設置したベランダ用ベースにアンテナを取付けます。

アンテナに付属している「Uボルト」を使用して、ベースに付いているポールの上部に取付けていきます。ナットをしっかりと締めれば取付完了です。

(3)同軸ケーブル通線・接続

 アンテナを設置したら、同軸ケーブルを通線します。予め決めておいたルートでケーブルを通していきます。

 

 室内への引き込みには「エアコンのドレンホース穴」を利用します。エアコンが設置されている場合には、ここにはパテが詰めてあり、穴を塞いであります。

 ほとんどの場合、パテは穴の表面部分のみに詰めてあり、奥までは入っていません。このため手やヘラなどを使うと簡単にパテを取り除くことが出来ます。

 取り除いたパテは、後から戻すので捨てずに保管しておきます。

 

 屋内と屋外両方のパテを取り除いたら、ドレンホース穴の隙間から穴が貫通しているのが見えると思います。

 ほとんどの場合、穴一杯にホースやケーブルが詰まっている事はなく、いくらかの隙間があります。この隙間を利用して同軸ケーブルを通線します。

 

 この時、どうしても同軸ケーブルが通りにくい場合は、細い針金などを先に通しておき、針金に同軸ケーブルを括りつけて引っ張ると、簡単に通すことが出来ます。同軸ケーブルが通ったら、取り除いておいたパテを元通りに埋め戻します。

 

 もし、エアコンが設置されていない場合は、ドレンホース穴にはカバーが付いていることが多いです。カバーを外せば穴が現れますので、ここにケーブルを通します。

 ケーブルを通したら、パテで穴を塞いでください。屋内外両方塞ぐので、パテの量はそれなりに必要です。

 

 通線が終わったら、ワイドバンドレシーバーに同軸ケーブルを接続します。この時、コネクターの種類が異なると接続が出来ません。今回の例でご紹介している「D190」に付属の同軸ケーブルにはM型コネクターが付いています。

 一方、ハンディタイプのレシーバーでは、アンテナコネクターには一般的に「BNC形」または「SMA形」が使われています。これを接続するためには「変換コネクタ―」を使用します。

 

 M形→BNC形や、M形→SMA形という変換コネクターがありますので、同軸ケーブル側のコネクター及びレシーバーのアンテナコネクターに合わせて変換コネクターを準備してください。下記に変換コネクターのご紹介と、各通販サイトでの購入リンクを準備していますので、ご利用ください。

M型→BNC型 変換コネクタ
(同軸ケーブル側がM型、レシーバー側の
アンテナコネクタがBNC型の場合に使用)
M型→SMA型 変換コネクタ
(同軸ケーブル側がM型、レシーバー側の
アンテナコネクタがBNC型の場合に使用)

 以上で、アンテナの設置工事が完了です。電波が受信できるか確認して、後は思う存分受信を楽しんでください。

4.安全対策

 アンテナを設置する工事では、 いろいろな危険が想定 されます。

 特にマンションの上階でアンテナを設置する際は、 絶対に金具や部品・工具の落下を起こさないようにしてください。万一落下したものが下の人に当たると、 死亡事故などの重大な事故になります。

 

 以下の注意事項を良く守って、安全な工事を行ってください。

(1)部品・工具等にはロープを付ける

 手すり用ベースやアンテナは、ベランダから外に出して設置します。

万一手を滑らせたりすると、そのまま落下する危険があります。必ず、部品や工具にはロープなどを付けておき、ロープの端を建物側に結んでおいてください。

 

 こうする事で、万一落下させてしまっても、ロープの範囲で止まってくれますので、下まで落ちる事故が防止できます。

もちろん、ロープは衝撃で切れたりしない、十分な強度のあるものを準備してください。

(2)台風などの強風対策を行っておく

 設置が終わったら、アンテナと手すり用ベースにロープを付けて、建物側の強固な部分にロープを繋いでおきましょう。

 

 万一台風などの強風でベースやアンテナが外れたとしても、ロープを繋いでおくことで落下事故を防止できます。金属製のワイヤーでも良いですが、アンテナの近くには金属製のものが無いほうが理想的です。

 

 また、半年に一度くらいは取付ベースやアンテナ各部のねじなどを点検し、緩みや錆による破損などが無いかを確認しておきましょう。台風の前にはもう一度取付状態を点検しておいてください。

 

 エアバンドの受信は趣味です。たかだか趣味の設備で、大きな事故を起こしてしまっては元も子もありません。安全に十分気を配って、エアバンドワッチを楽しみましょう!