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アイコムのワイドバンドレシーバ IC-R6を解説

 「IC-R6」は2010年1月に発売された「アイコム」のロングセラー製品です。2025年5月現在、一般的に入手可能なワイドバンドレシーバーの中では最も低価格で、初めてワイドバンドレシーバーとして購入しやすい価格帯です。

 

 アマチュア無線を30年以上やっている私の経験上、アイコムの製品は非常に高い信頼性と、考え抜かれた操作性の良さを兼ね備えています。

ここではアイコムから発売されている「IC-R6」を徹底解説します。

 初めての一台として購入を検討されている方は、是非参考にして下さい。もちろん今お使いのレシーバーからの買い替えを検討されている方にも、2台目のレシーバーとしてもお勧めです。

1.IC-R6の主な仕様

 最初に「IC-R6」の主な仕様を記載します。

項  目 仕  様 備  考
受信可能周波数 0.1~1309.995MHz 標準では一部
非対応周波数あり
受信電波形式 AM/FM/ワイドFM  
使用電源 単三型アルカリ乾電池×2本(DC3V)
単三型ニッケル水素電池×2本(DC2.4V)
外部電源:定格4.5V(4.5~6.3V)
 
バッテリー持続時間 ニッケル水素電池:約15時間
アルカリ乾電池 :約19時間
メーカーの定める
条件での持続時間
メモリーチャンネル 通常メモリー:1300チャンネル
スキャンエッジ25組50チャンネル
オートライトスキャン用:200チャンネル
 
サイズ・重量 [サイズ]幅58×高さ86×奥行29.8(mm)
            ※突起含まず
[重 量]アンテナ・付属電池含め約200g
 
標準付属品 アンテナ・充電器(ACアダプタ)・
ニッケル水素電池・ベルトクリップ・
ハンドストラップ
 
価格 \19,800前後 2025年5月現在の
楽天販売価格
  詳細仕様はこちらからメーカーのホームページでご確認ください。価格は変動しますので、購入の際にはご自身で確認をお願いいたします。
2.入手しやすい価格帯

 2025年5月現在で販売されているハンディタイプの国産ワイドバンドレシーバーは、アイコムの「IC-R6」と「IC-R15」、アルインコの「DJ-X82」と「DJ-X100」4機種です。それぞれ参考価格は以下の通りです。

 

 【アイコム】 IC-R6 :\19,800  IC-R15 :\49,800

 【アルインコ】DJ-X82 :\24,200  DJ-X100 :\79,200

 

 それぞれ、仕様の違いがありますので価格差があるのは当然ですが、最も安価に入手できるのは「IC-R6」です。

エアバンドワッチ初心者の方にとって、初めての購入にはそれなりに勇気が必要です。その中で「IC-R6」は比較的購入を決断しやすい価格と言えます。

 また、既にワイドバンドレシーバーをお持ちの方には、2台目としても購入しやすい価格だと考えます。

3.小型軽量で優れた携帯性

 空港の近くなどに持って行って使う事が多いワイドバンドレシーバーですので、携帯性の良さは重要なポイントです。

 

 IC-R6は重量がアンテナ・バッテリを含めても「200グラム」の軽量です。サイズも幅58×高86×奥行29.8(mm)の小型軽量。奥行を除けばスマートフォンとそれ程変わらないサイズ感ですね。

(ただし、付属のアンテナは本体より少し長めです)

 

 標準付属品のベルトクリップで、ベルトなどに挟み込んでおけばレシーバーを持つ手が空きます。写真撮影などの邪魔になる事もなく快適にエアバンドワッチが楽しめます。

4.付属充電池と市販乾電池使用で、長時間使用でも安心

 携帯型のワイドバンドレシーバーでは、バッテリライフも重要な要素です。

お目当ての航空機を目の前にしたタイミングでバッテリ切れを起こしてしまうと、せっかくの楽しい時間も台無し・・・。

 

 「IC-R6」は、付属の充電式ニッケル水素電池で約15時間の長時間稼動です。しかも単三アルカリ乾電池では19時間のロングライフも可能です。必要な電池はたったの2本。

 

 この単三乾電池が使えるという事、結構大事なポイントです。私はアマチュア無線を30年以上やっていますが、昔使っていたハンディタイプの無線機で、専用のバッテリーパックしか使えない機種がありました。乾電池が使えなかったので、使用中にバッテリー残量が無くなってしまうと無線機が使えなくなってしまう・・・という不便さを経験したことがあります。

 

 なので、コンビニなど身近で購入できる乾電池なら、万一充電式電池が使えなくなってもスグに対応できて安心です。しかも必要本数が少ないので、省コストです。

5.1300チャンネルの豊富なメモリー容量

 航空管制では、たくさんの周波数が様々なセクションに割り当てられています。

 

 例えば羽田空港を例にとれば、タワーだけでも第1ターミナル側と第2ターミナル側で別れています。これにグランドやクリアランスデリバリー・デパーチャーやアプローチを含めれば、10以上の周波数が使用されていることになります。

 聞きたいセクションが変わるたびにいちいち手で周波数を変えていたのでは大変ですので、レシーバーの「メモリー機能」を使用します。予め聞きたいセクションの周波数・電波型式をメモリーにセットしておけば、メモリーチャンネルを切り替えるだけで簡単に周波数の変更が出来ます。

 

 IC-R6では、1300チャンネルのメモリーを装備しているので、好きな周波数を自由にメモリーしておくことが出来ます。また「バンク機能」を使用すると、100チャンネル単位で周波数をまとめて管理する事が可能。例えば「羽田空港」をAバンクに、「成田空港」をBバンクに・・・と言うように別けておけば、空港が変わるたびにバンクを変えるだけで簡単に周波数変更が出来ます。

 

 このメモリーチャンネル数、もっと多い2000チャンネルなどを搭載している機種もあります。しかし、実際に使用するチャンネル数を考えると、1000チャンネル前後でも十分なことが多いです。逆に多すぎるメモリーは、管理する手間が大変になってきます。

 エアバンド以外の無線も聞きたいなど、ワイドバンドレシーバーをより活用したい方は、メモリーチャンネルの多い機種を購入する、という選択肢もあります。。

 

 メモリーには英数・記号を使用して名前を付けることが出来ますので、メモリーの呼出しがわかりやすくなります。

ただし、名前に使えるのは英数・記号のみです。カタカナ等の日本語が使えませんが、例えば空港名に「HND」・「RJTT」(羽田空港の場合)など3レターや4レターコードや、「TWR」や「GND」(管制セクションの略称)などを使って工夫する事で、わかりやすい名前にすることが出来ます。

6.テンキーボードは無し

 「IC-R6」にはテンキーボードがありません。なので、周波数やメモリーチャンネルを直接テンキーで入力することが出来ません。

操作ボタンは電源ボタンを含めて9個のみ。一見すると操作性が悪そうに見えますが、通常のエアバンドワッチであればこれで十分なのです。

 

 メモリーチャンネルのお話しで書いたように、エアバンドワッチではメモリーを駆使しますので、通常の受信時にはメモリーチャンネルの切替操作が主となります。操作はメインダイアルとファンクションキーだけでほとんど出来ます。

 ただ、メモリーに入っていない周波数に瞬時に変更する時など、テンキーボードが欲しくなると思いますが、 IC-R6では少ない操作キーで大きく周波数変更できる機能がありますので、テンキーが無くても十分に対応が可能です。

 また、エアバンドワッチ初心者の方には、シンプルな操作のほうが使いやすくなることもあります。

7.3色から選べるカラーバリエーション

 「無線機」と聞いて、皆さんはどんなカラーをイメージしますか?

 

 テレビドラマなどで時々出てくる無線機は、ほとんどが黒やグレー系のカラーですよね。おそらく多くの方がそのようなカラーリングをイメージするのではないでしょうか。IC-R6を含めて、当サイトで紹介しているレシーバーは基本的には黒系のカラーリングです。

 

 「IC-R6」では、基本色の他に「メタリ ックレッド」と「メタリックブルー」を含めた3色から、好きな色のモデルを選ぶことが出来ます。
性能には関係ありませんが、せっかく持つなら少しでも個性的なレシーバーを選びたいところですよね。好きなカラーを選んで、永く良き相棒となってもらいましょう。

通常カラーモデル メタリックレッドモデル メタリックブルーモデル

 

8.パソコンと接続してメモリー管理が簡単に!

 航空管制では様々なセクションが、それぞれ異なる周波数で航空機を管制しています。

 

特定の空港で、グランド・タワー・レーダー・ATISくらいのセクションしか聞かない・・・という使い方なら、周波数を記憶しておくことが出来るでしょう。

 しかし、各地の空港でそれぞれの管制を聞きたい・・・となると話は別。結構な数の周波数を記憶する必要があります。例えば九州地方にある空港の、タワーとレディオだけでも10以上、これにグランドやアプローチを加えるとさらに多くの周波数になります。これはなかなか大変ですよね。

 そこでワイドバンドレシーバーのメモリー機能を利用するわけですが、使っているメモリーが増えてくると管理するのも大変になってきます。

 

 IC-R6では、オプションのプログラミングソフト「CS-R6」を使用して、パソコンでメモリーの編集・管理が可能になります。また、クローニングケーブル「OPC-478UD」と一緒に購入すれば、IC-R6とパソコンを接続してメモリ内容をパソコンに読み出したり、編集した内容をレシーバーに書き込んだりすることが出来るようになります。

 パソコン上でメモリー内容を編集出来ると管理が非常に楽になります。IC-R6にはテンキーが付いていないので、本体のみでメモリーの編集・管理をするのは結構手間がかかります。

 また、もしもレシーバーの故障などでメモリーがリセットされてしまっても、パソコンにバックアップがあれば簡単に復旧することが出来ます。

たくさんの管制周波数をメモリーするなら、プログラミングソフトとクローニングケーブルは揃えておくことをお勧めします。

 

 プログラミングソフト「CS-R6」と、クローニングケーブル「OPC-478UD」は、下記のリンクから通販サイトでの購入が可能です。

プログラミングソフトウェア
CS-R6 USBタイプ
クローニングケーブル
OPC-478UD
9.IC-R6解説まとめ

 以上、アイコムのロングセラー製品「IC-R6」について解説してきました。

 「IC-R6」のおすすめポイントをまとめると以下の3つになります。

(1)購入しやすい価格

 2025年5月現在で販売されている製品の中では最も安価ですので、初めての1台として、また既にレシーバーを持っている方には2台目として、購入しやすい価格と考えます。

(2)長時間のバッテリー持続時間

 単三型アルカリ乾電池で約19時間のロングライフなので、新品の電池ならほぼ1日使うことができます。付属のニッケル水素電池でも、フル充電しておけば約15時間使うことができます。

 外出先で、電池残量を気にせずエアバンドワッチを楽しむことが出来ます。

(3)初心者にも使いやすいシンプルな操作

 テンキーボードがないので、メモリーの編集など複雑な操作はやや手間になりますが、メモリーチャンネルの切替など通常の操作であれば十分です。シンプルな操作で覚えやすく、初心者にも使いやすいと考えます。

 発売から約15年経っているため、最新のワイドバンドレシーバーに比べると劣る点も必ずありますが、ロングセラーならではの信頼感・安心感のある製品と思います。永い実績のある「アイコム」製である点も大きなポイントです。